エレファント Elephant/ Gus Van Sant

2003年公開。1999年4月20日にコロラド州で起きた、コロンバイン高校銃乱射事件を基にした映画。

事件のあった日のそれぞれの生徒の1日を描く。

生徒それぞれがさまざまな問題を抱えながら、当たり前の日常を当たり前に送るはずだった。
そんな1日に起きた惨劇を描く。

・父親がおそらくアルコール依存症なのであろう、少年ジョン。
・同性異性愛問題についてのディスカッションに参加するアケイディア。
・モテ男でイケメンだが、いじめ加害者のネイサンは彼女とイチャイチャ。女子たちからも熱い視線を浴びる。
・噂話や、親の愚痴を言う女子生徒は、3人そろってダイエットのために食べた昼食を無理にトイレで吐き出す(食べなきゃいい)。その後はお決まりのようにトイレの鏡を占領し化粧をする。放課後は買い物に行く予定。
・周りからバカにされている地味な女の子ミシェルは、その日図書館でのアルバイトを始めた。
・そして、いじめられているアレックスとエリック。

犯人は2人。いじめられているその2人の少年たち。

映画の中で多くは語られない。なぜ事件を起こしたかははっきりと明らかにはされない。それぞれの日常が淡々と描かれる。アレックスとエリックの日常も他の生徒たちの日常と同列に描かれている。

事件を起こすアレックスが授業中に他の生徒から何か粘着物を投げつけられ、トイレでキレイにする描写がある。エリックが人を的にした射殺ゲームに興じる描写がある。犯人の二人がナチスドイツをテレビで見ている描写がある。事件を起こす前に二人がシャワーを浴びてキスをする描写がある。校長先生を射殺する際に、いじめ問題をないがしろにしていたと恨みを言う描写もある。

こういった描写から感じとることはできる。

事件を計画に移す直前の作戦会議で、最後にアレックスがエリックに Have fun/楽しんで、といったところが印象的だった。いかにも、なんというか、言いそうなセリフ。

おそらく犯人の二人にも銃乱射に対しての恐怖は、少なからずあったに違いないのだ。ただのいじめられていた高校生。いじめは嫌だった。いじめに恐怖していた。そこから出てくるセリフ、Have fun は怖じ気づいていないことを示したいそんな気持ちが滲んでいるように感じる。一種の強がりのような。いかにもこの一大事件を起こさんとする少年たちが言いそうな、とても生々しいセリフだと思った。

実際の事件をもとに、映画用に脚色されてはいるようだが、なかなか面白い映画であった。

Elephant in the room

題名の「エレファント」には、さまざまな意味があり、そのうちの一つ、Elephant in the room (居間にいる象)は、誰もが気づいているのに、誰もその話題に触れようとしないこと、見て見ぬふりをすることをさす言葉だ。

ちなみに、アルコール依存症の父を演じている、ティモシーボトムスTimothy James Bottomsは、ジョニーは戦場へ行った(Johnny got his gun)で、目、鼻、口、耳、両腕両脚を失うことになる兵士ジョニーを演じている。

Johnny got his gun もかなり考えさせられる深い映画だったなあ。

まとめ

映画エレファント、ぜひ見てみてください。

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