ジョニー・デップとアンバーハードの裁判がどろどろと進んでおり、毎日興味深く拝見しています。
今回の裁判はテレビで放映されており、youtubeにもたくさんの切り抜き動画があがっているので、興味がある方は是非ご覧ください。
なぜ争っているのか
前回のこの二人に関する裁判は、英国で行われたもので、このときは、英国の大衆紙「The Sun」(新聞)がジョニー・デップを「wife beater」だと一面に大きく載せた件で、ジョニー・デップがThe Sunを訴えましたが、敗訴しました。
今回、ジョニー・デップはアンバーハード本人を名誉毀損で訴えています。
アンバーがアメリカの新聞「The Washington Post」に、その当時盛んに言われていた「Me Too Movement」(性被害を公に訴える動き)に便乗して、「自分もDomestic Violenceを生き抜いた一人だ」と記事を出しました。
その記事が決定打となり、撮影予定の映画から降板させられるなど、ジョニー・デップの名誉が傷ついたとして、ジョニー・デップがアンバーハードに、50 million ドル (日本円にしておよそ64.5憶円。2022.5月現在)の賠償請求をしています。
ちなみに、これに対しアンバーは、100 million ドル で反訴しています。
ジョニーはアンバーの主張を真っ向から否定しています。誰にも暴力をふるったことはなく、性的に虐待していたなんて、絶対にあり得ないAbsolutely not!と証言しています。
どちらが正しいのかな?
行方を見守りましょう。
Justice for JD!
意義あり!の英語
意義あり!は英語でObjection!といいます。
個人的な話ですが、高校の英語の授業で先生が急に「Objection!!」と叫んだことがあり、私の中でとても印象に残っている単語です。笑
では、代表的なobjection を紹介していきたいと思います。
- Hearsay
伝聞証拠
自分が見た、体験したことでなく、人から聞いたことを証言した場合に、Objection hearsay!と唱えられます。
アンバー弁護士:As a result of the consultation, what did you learn about your nose?
相談した結果、自身の鼻についてどんなことが分かりましたか?
(アンバーはジョニーにやられたと主張している壊れた鼻を耳鼻科の先生に診てもらいにいったそうで、その結果の話)
ジョニー弁護士:Objection, hearsay.
異議を唱えます。伝聞証拠です。
- Leading question
誘導尋問
Objection leading!は、尋問者が希望する内容の答弁を暗示して、その供述を得ようとする尋問です。暗示に誘導されて証言する危険があるため、禁止されています。
アンバー弁護士:You didn’t tell anyone about the abuse untill the TRO, is that true?
TROまで誰にも虐待のことを話していないのは、事実ですね?
ジョニー弁護士:Objection, your honor, leading!
裁判長、異義あり。誘導尋問です。
※TRO:temporary restraining order 一時的接近禁止令
※アンバーが、裁判所に申し立てた。
なぜなら「鍵を変えて心穏やかに眠りたかったから」だと証言している。
- Speculation
憶測
証人が、体験していない事実について、推測で証言をした場合に、Objection!Speculation!と異議が唱えられます。証人が個人的に知り得ていない証言は、証言として認められず、裁判記録にも残すことはできません。
また、証人が憶測でしか答えられないような質問を尋問者がした場合にも、この質問は、異議の対象となります。
Objection!Calls for speculation.
意義あり!憶測です。
Calls は要求するの意味。
- Foundation issues
根拠の問題
質問や証言において、本人が質問/証言している情報をどのように知るに至ったかの背景を、適切に説明せずに質問/証言した場合に異議が唱えられます。
具体的な事実について答える時、証人は自分が知っている情報をどのように知っているのか、どのように得たのか、説明しなければなりません。
Foundation は女性にはお馴染み、顔に塗ったくる(笑)ファンデーションです。基礎、土台という意味です。根拠という意味もあり、ここではそちらを採用しました。
Objection, lack of foundation.
意義あり、根拠が欠如しています。
Lackは欠けているの意味。
- Relevance
関連性なし
Relevanceは関連性、妥当性といった意味を持つ単語です。
今争っている裁判に関係しない、または勝訴敗訴に関係がないと思われる証言をしたり、質問がなされた場合に、Objection relevance!と異議が唱えられます。
- Unfair/prejudicial
不公平/偏見を抱かせる
証拠がその裁判に関係があったとしても、もしその証拠が裁判官や陪審員に不公平に提示された時、その証拠にobjection unfair/objection prejudicial!と異議を唱えることができます。
Unfair は日本語でもアンフェアと言いますね。不公平な、という意味です。
Prejudicialはあまり聞かないかもしれませんが、この単語の名詞バージョンのprejudice は、英国の有名作家Jane Austin の「pride and prejudice /プライドと偏見」を例に出すと、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
Prejudiceは名詞で、prejudicial が形容詞になります。プリジャディシャルと発音します。
- Compound question
複合尋問
Compoundは、複合の、という意味があります。
ひとつの尋問に、二つ以上の質問が含まれている場合にこれに当たります。複合尋問は、証人や裁判官、陪審員を混乱させるため禁止されています。また、裁判の記録をとるにあたり、どの質問の答えがどの証言なのかが分かりにくくなってしまう為でもあります。
- Argumentative
論争的
証人尋問には、自分方の弁護士から質問されながらそれに答える直接尋問と、相手方の弁護士から質問されながらそれに答える反対尋問があります。objection argumentative!は、反対尋問の際に、相手方の弁護士が好戦的に、論争をしかけて来たときなどに自分方の弁護士が唱えてくれる異議です。
よく、badgering the witness などと言われます。
繰り返し同じ質問をしたり、失礼な言葉を使ったり、大声を張り上げたりなどした際に発せられます。
Objection argumentative. He is badgering the witness!
badger は人をしつこく苦しめる、という意味があります。
Witnessは、ここでは証言台で証言している人。
- Asked and answered
重複尋問
(すでに質問され証言した)
弁護人が質問をし、証人がすでに証言したにもかかわらず、少しだけ言い回しを変えて質問を繰り返した場合に、objection asked and answered !と異議が唱えられます。
法廷では、相手の証言の矛盾を引き出したり、もしくは、自陣の証人の証言をより良いものに導くために、繰り返し似たような質問がされることがあります。一度質問され、すでに回答された場合は、それ以上の質問は禁止されています。
- Vague
不明瞭
何についての質問かが、分からない、もしくはわかりづらいときに、Objection vague!と異議が唱えられます。反対尋問で自陣の証人が不明瞭な質問をされていた場合に、唱えます。証人が質問を誤って解釈し、不利になる証言をする恐れがあるためです。
この異議が唱えられた場合、尋問者はより分かりやすく、詳細に質問をし直さなければなりません。
- Non-responsive
きちんと答えていない
証人が質問と全く関係のない情報で質問に答え始めた場合に、Objection non-responsive!と反論することができます。 Yes か No で答えられる質問をしたにもかかわらず、証人がそれに答えず、曖昧な回答をした場合などがこれにあたります。
また、質問内容にかかわらず、証人が自身に悪い印象を与えかねない答えを回避し弁解しようとするときにも、この異議が唱えられます。
- Opinion
意見
もし証人が、直接知らない事実に基づいて意見を述べた場合、それは彼らの意見でしかないとして、異議が唱えられます。
一般的に裁判で意見を述べることが出来るのは、裁判官に専門的な証人として認められた証人だけです。彼らは expert witness と言われます。(専門家証人)
アメリカの裁判では、証人は事実証人(fact witness)と専門家証人(expert witness)に分けられています。
ちなみに、裁判官はsustainするかoverruleするかで、唱えられたobjectionに答えます。
I’ll sustain the objection.
異議を認めます。
I’ll overrule the objection.
異議を棄却します。
以上。異議なし。おしまい。